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欲張った魔理沙


 紅魔館から、箒に乗った魔法使いが一直線に飛び出してきた。その魔法使いは両手いっぱいに山積みの本を抱え、ふらついていて、自慢の速さを全く発揮できないでいた。
「魔理沙さん!」
 さっそく後方から追手がやってきた。その者は、背中と頭にかわいらしい羽を黒く生やし、赤髪で、黒いベストと白いシャツに赤ネクタイを締め使用人といった恰好をしていた。結局、使用人は難なく魔理沙に追いつき、後ろから両手でがっちりと捕まえた。
 暴れる魔理沙を逃がすまいと必死に抱きつく使用人は、魔理沙を掴んだまま近くの地面へ降りた。
「早く離してくれ」
 地上に足をつけるや否や、落ち着いた魔理沙が当然の権利といった態度で解放を求める。使用人は、魔理沙を覆うほどの本の束に目を遣って、答えた。
「せめてその半分ぐらいなら逃げられたでしょうに」
 魔理沙はその場で言うとおりにした。

  おわり


『少年とハシバミの実』より