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ヤマメもおだてりゃ糸を吊る


 地底の暗がりに赤や青の光球が飛び交うさなか、魔理沙は跨っている箒の先を握り締め、「ちょっと待ってくれ!」と声を張り上げた。
「お前は妖怪のくせに愛嬌があるんだな。それに、とてもつやのある外見をしている」
「へへ、そうかい?」
 壁に背を向けた土色の少女は弾幕をピタリと止め、ひんやりとした静寂の中でケタケタと笑い声を響かせた。
「だが、蜘蛛なのにどうして空を飛んでいるんだ? 糸にぶらさがっていれば完璧なのに」
 すると、少女は足先から天井に向かって糸を出し、宙ぶらりんになって両手を広げてみせた。
「ああ、最高だな、それでこそ」
 魔理沙は宙吊りの少女に近づき、糸を切り、暗闇に落ちてゆく少女を見届けた。

  おわり


『キツネとカラス』より