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白蓮の治世


 神権政治に打ち勝った命蓮寺による統治が始まった。境内に集まる夥(おびただ)しい人妖を前に、木製の朝礼台に立つ白蓮が凛とした声色で所見を告げた。
「皆さん。人間と妖怪が血を流し合う時代は終わりました。これからはお互いが、皆さんが手を取り合って生きていくのです」
 俄かにざわめきが起こるが、もはや以前のように表だって反発する者はいなくなった。ようやく我々の志が理解されたのだと、心がいっぱいに満たされた白蓮は少し間をとって、言葉を続けた。
「この理念を果たすための、新しい幻想郷の決まりをお伝えします。
 手始めに猫と鼠、犬と兎、氷と炎、春と秋、あなたがたは決して争わず、一緒に暮らしていくようにしましょう」
 人参をぶら下げた兎が隅の方で、背筋を伸ばして熱心に耳を傾ける白狼天狗を横目に呟いた。
「ああ、なんていい時代なんでしょう。長生きする甲斐があるってものだわ」
 兎はそう言い終わると天に唾を吐いて、それが落ちてくるよりも早く一目散に逃げ出した。

  おわり


『ライオンの御代』より