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満月を仰ぐ者たち


「これでも、昔は月で将来を嘱望されていたんですよ」
 鈴仙は縁側で夜空を眺めながら、隣で佇む輝夜に語りかけた。辺りは涼しげで澄み切った空気に包まれていた。
「それなのに、地上に降りてからは何かと面倒な役回りばかりさせられて」
「イナバ」
 すると、それまで満月を見上げたまま黙っていた輝夜が初めて鈴仙の方を振り向いた。お互いに、顔の半分が月明かりで白く染まった。
「誰しも運命には浮き沈みが付き物なのよ」

  おわり


『軍馬と粉屋』より