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弾幕の安全基準


 気持ちの良い風が西から東へと吹き抜けていった。太陽はもうすぐ一番高いところに辿りつきそうだった。
 霧雨魔理沙は、人里から少し離れた丘の辺りを飛んでいた。地上を見ると、鈴蘭が一か所に纏まって群生していて、緑の草原に紫を強調させていた。
 前方に目線を戻すと、小さな人形が大の字になって行く手を阻もうとしていた。魔理沙は浮いたままその場に静止した。
「そんなんじゃ誰も止められないぜ」
「貴方が止まっているじゃない」
「それもそうだ」
 魔理沙は半身になって八卦路を構えた。メディスンは魔理沙の態勢を見ると、手を広げたまま空中で一回転してみせた。

 メディスン目掛けて、魔理沙がしきりにレーザーを放つ。メディスンはひらりとそれを交わしながら、小さな口で何やら呟いていた。暫くすると、メディスンの周りに、黒混じりの紫のような気体が集まり始めた。魔理沙は攻撃の手を緩めないまま、その推移を目で追っていた。
 魔理沙がいくら攻めてもメディスンの毒は凝集し続け、ついにはメディスンの十倍ほどの球体に膨れ上がった。メディスンはその中にすっぽりと収まっていた。
「行くよ!」
 メディスンが右手を掲げようとした。
「ちょっと待ったあ!」
 その瞬間、魔理沙が目の色を変えて叫んだ。メディスンは驚いて魔理沙を見て、動きをぴたりと止めた。
「そこまでされちゃあ私にとっては命に関わる」
 魔理沙はそう言うや否や、残像を置いて飛び去った。

  おわり


『少年たちとカエルたち』より