質と量
魔理沙は月明かりに照らされた草原に足を張った。正面からは、小さな萃香の群れが地面を埋め尽くすほどに殺到していた。 「数がありゃいいってもんじゃないぜ」 夥しい足音を前に、魔理沙は八卦路を構えた。萃香らを引き付けるために一度深呼吸をしてから、右手の先に魔力を込めて、最後の一押しをぐっと加えた。その瞬間、地面を揺らす轟音と共に極太の光線が放たれた。夜闇を切り裂く余りの眩しさに魔理沙も目を覆った。 光が収まって再び前を見ると、萃香の集団は跡形も無く消え去っていた。ただそよ風だけが残っていた。魔理沙は細く息を吐きながら、八卦路を持つ右手をゆっくりと下ろした。だがそのとき、前方少し離れたところに霧が薄く立ち込め始めた。その霧はだんだんと鬼の形に集まり始めて、魔理沙が息を呑むのを嘲笑うかのように、月を隠すほどの巨体が眼前に形成された。 「さあ始めようじゃないか。質と量のぶつかり合いを」 おわり 『牝のライオン』より