プリズムリバーの皺寄せ担当
湖の付近にひっそりと建つ朽ち果てた洋館は、音楽が大好きな幽霊三姉妹の所有物件である。その中では、2人の賑やかしが好き勝手に暴れていた。 「つかれたー」 「さわぎたーい」 姉妹の下2人が、タイルの床で勢いよく転がりながらうおおんと唸る。それに対して全身に黒を纏った長女は、ライブ明けだから仕方ないとその様子を横目で見ながら、黙々と机に向かっていた。 すると、地面にごろごろしていた2人のうち、赤い服がむくりと起き上がった。身柄の小さな赤服はちょこちょこと長女へ近づくと、椅子に座る長女の脇腹にガバと抱きついて呻き始めた。 「づーがーれーだー」 赤服は怨嗟の念のようなものをひとしきり洩らした後、そのままずるずると床へ滑り落ちていった。 その様子を寝転がりながら眺めていた桜色の服の者は、私も混ぜてと反対方向から長女にしがみ付いた。 「おしおきだべー」 桜色は軽快に声を震わせながら、長女の両肩を掴んで顔を覗き込んだ。長女は桜色からピッと目を逸らし、青筋を立てながら呟いた。 「ずっとライブの書類をまとめているのよ、私だけが」 おわり 『牡ウシと車軸』より