幽香と小さな妖怪たち
ここ最近、どういうわけか太陽の畑に妖精や小さな妖怪がやってくる。氷の妖精や夜雀、蛍などが上空で追いかけっこをしている様子を、風見幽香は遠巻きに眺めていた。 ある時、妖精が向日葵の一人を凍らせようとした。幽香は目の色を変えて急行すると、妖精を鋭く睨んで弾幕を放つ格好をとった。妖精と仲間の夜雀は驚き飛び上がって、慌てふためきながら逃げていった。 それからも幽香は、誰かが植物に手を出そうとする度に迎撃の構えを見せた。そして逃げていく妖精妖怪の様子を、ぼんやりと眺めるのであった。 だが幽香の手の内はちびっ子たちに見透かされ始めた。彼女たちは幽香が実際に弾幕を撃ってこないと踏んで余裕を持って逃げるようになり、終いには堂々と居座り始めた。 その態度を見た幽香は一瞬目を泳がせたが、もう一度正面を見据えると体にゆっくりと力を溜め、そして妖精たちに色とりどりの花を飛ばした。 弾幕は何れも妖精たちに命中しなかった。けれどもその場にいた者たちはひどく動転して、蜘蛛の子を散らすように七色に輝く畑から離れていった。 彼女たちが去った太陽の畑には、ただ風と草の擦れる音だけが残った。 幽香はさっきまで妖精がいた地面を見て、それから気の合う向日葵に向かって「あなたには話しかけられるのに」と語った。 おわり 『農夫とツルたち』より