幽々子と夜雀さん
きまぐれで暗がりの森を歩いていた幽々子は、何やらふんわりと優しい歌声を聞き取った。 声がする方へ近づいてみると、かわいらしい夜雀が切り株に腰を掛け、体を揺らしながら歌っていた。 「夜雀さん。あなたの声はとても綺麗なのね」 「えへへ、ありがとう」 照れくさそうに脚をぶらぶらさせる夜雀に、幽々子はもっといろいろなことを尋ねたくなった。 「ねえ夜雀さん。いったい何を食べたらそんな声が出るの?」 幽々子が夜雀を見つめながら尋ねると、彼女は少し真顔になって、それから頬を緩めて 「八目鰻なんかがおすすめですよ」 と軽快に答えた。 「どうやって食べればいいのかしら」 幽々子は初めて聞く食材に身を乗り出した。 「丸焼きでもおいしいよ! 先にワタを取っておくともっとおいしいよ」 夜雀は屈託のない笑顔のまま答える。 「へえ」 それで、幽々子は、丸焼きに決めた。 おわり 『ロバとキリギリス』より