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ウサギと文


 鈴仙が買い出しに人里を訪れていると、空から天狗の少女が降ってきた。
「貴方って月人の割にはこれといった特徴が無いですね」
「ブン屋に比べたら真っ当だわ」
「なら試してみましょうか?」

 口車に乗せられて、鈴仙がしまったと思った時には既に舞台ができあがっていた。鈴仙と射命丸で速さ比べをすることになったのである。
 けれどもここまで来て逃げ出すようなマネはしない。鈴仙は、呼吸を整えて行く先を見据えた。

 二人は同時に空へ舞い上がった。鈴仙は水平一直線を描いて飛んでいく。周りの景色が瞬く間に後退していく。かつてない速力に、鈴仙は確かな手ごたえを噛み締めていた。
 その頃、射命丸は目的地で横になると、そのまま眠り込んだ。

  おわり


『ウサギとカメ』より