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射命丸と彼女の付き添い


 木の上でごそごそと荷物を纏めている射命丸文が下を眺めると、犬走椛が両手を伸ばして退屈そうにあくびをしていた。
 それを目ざとく見つけた射命丸は軽々とした身のこなしで椛のもとへ飛び降りると、椛の頭をコツリと叩いて
「ずいぶんと余裕綽々じゃない。もう準備はできているのかしら?」
と、お互いの鼻がくっつきそうなほどに顔を接近させながら詰問した。
 椛は一瞬目を見開いて硬直したが、肩の力を抜くと一言
「待っているのは私です」
と呆れた顔で言葉を洩らした。

 射命丸は椛の言葉を聞くや否や跳躍で木の上に戻り、荷物をかき集めて颯爽と飛び去った。

  おわり


『旅行者と彼のイヌ』より