パチュリーはソース
「パチュリー様! またお部屋をこんなに散らかして」 図書館の奥に据えられた一室に飛び込んだ小悪魔は、床に散乱する本の隙間を足場にしてパチュリーに詰め寄った。 「あら。ノックも無しに入るなんて礼儀がなっていないわ」 「何度もしました! 本に熱中すると何も見えなくなるんだから」 小悪魔は椅子に深く腰掛けるパチュリーの横に仁王立ちして、ムッとした顔を作ってみせる。 「そんなに片付けるのが嫌だったら、別にしなくてもいいのよ?」 次のひとことを言おうとした小悪魔は口を結んだ。パチュリーの言葉尻がやけに響く。そのまま、片や熱い眼差し、片や冷静な目でじっと見つめ合う。ひとしきりの沈黙が続いたのち、小悪魔は眉を曲げて息を洩らした。 「もう」 観念した表情で本を纏め始める小悪魔に、パチュリーは「ごめんね」と密かに囁いてから、机の上の書物に再び手を伸ばした。 おわり 『川と海』より