歌でおびき寄せるミスティア
ミスティア・ローレライは名案を編み出した。歌でヤツメウナギをおびき寄せればいいのである。陽気な歌につられて、ウナギが岸まで跳ね上がってくるだろう。 そうと決まれば実行に移すしかない。ミスティアは、小川のせせらぎを伴奏に透明な歌声を奏で始めた。 公演1回分ほどの曲を歌い切った頃だろうか。それでも一向にウナギが飛び跳ねる気配は無い。息を切らしたミスティアはとうとう待ちきれなくなって、歌うのをやめて釣り糸を垂らし始めた。蚕から採れた自慢の糸が夕日に輝く。 するとどうしたことだろう、あれよあれよと魚籠(びく)一杯の、つやつやウナギが釣れるじゃないか。 薄汚れた黄色の魚籠で、生き生きクネクネと跳ね回る白いウナギたち。それを見たミスティアは、 「なんで今さら踊るのよ!」 と地団太を踏んだそうな。 おわり 『笛を吹く漁師』より